本当に愛おしい君の唇
 第一、熊川コンストラクションの社員たちは、金兼原建設の人間たちの言うことを素直に聞くだろうか……?


 反発が出るのも予想される。


 離反する人間もいるだろう。


 ゼネコンという世界はそういった事実に事欠かない。


 治登も業界にいる以上、そういった骨肉を食(は)むようなことをある程度は知っていて、実際仕掛けられた方が堪らないのを感じていた。


 建設業界は一際競争が激しい。


 国土交通省が年々、無駄な予算を省くようになってきている。


 特に今の政府は予算編成には重点を置いていた。


 昔とはガラリと事情が変わったのである。


 建設会社は合従連衡(がっしょうれんこう)が続いていて、和弘がそんな時代の中で金兼原建設を成長させたいのは分かるのだが……。


 確かに治登は余計なことに関して、口出しするつもりは一切ない。
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