本当に愛おしい君の唇
 幾分寒い。


 夜なので冷え込むのだ。


 直美が後から付いてきた。


「小林さん、ホントにご馳走になっていいんですか?」


「ああ。俺は惚れ込んだ女にはべったりだからな」


「奥さんがおられるのに?」


「うん。別に構わないよ。女房の相手なんかしないから」


 治登がそう言い、直美の手を握って、


「口直しで肉料理でも食おう」


 と言った。


「じゃあ甘えさせてもらいます」


 直美は相変わらずスーツから甘い匂いを醸し出している。


 女性としてすっかり熟した体だからか、治登はその香りに虜(とりこ)になっていた。
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