本当に愛おしい君の唇
第24章
     24
 治登はその日の午前中の勤務を終え、昼食を取るために専務室を出て、単身近くのランチ店へと向かった。


 ホントなら大多か樺島を誘ってもよかったのだが、どうやら二人とも出前を頼んだらしく、治登は蒸し暑い中、ワイシャツ姿で店へと歩いていく。


 新宿にはランチ専門店が多数あった。


 普通の人間なら、どこの店を利用していいのかすら分からないぐらい。


 だが、治登はどこにどういった店があるのか知っていた。


 まるで自分の家の庭のように。


 そして混雑する店に辿り着くと、ウエイターから、


「いらっしゃいませ。お一人様ですね?」


 と声を掛けられた。


「ああ」


「おタバコ吸われます?」

< 130 / 171 >

この作品をシェア

pagetop