本当に愛おしい君の唇
「うん」


「では、奥の喫煙席へとどうぞ」


 治登が頷き、タバコの煙が充満している奥の座席へと向かった。


 今頃古賀原は寒い北海道にいるだろうなと思っていて。


 確かに治登は今回の人事に関しては、古賀原と石松、それに西を半ば追放するようにした。


 これで正解なのである。


 仕事をしない人間に本社にいる資格はない。


 僻地で地味にしっかりと働いてもらうのが一番だ。


 治登はそういった点では実に残酷なのだった。


 ちょっとした形から肉体関係にまでなった直美を誰よりも愛おしく思う反面、若い男と寝ている有希とは離婚する気でいたのだし、古賀原たちのように無能な社員を遠慮なしに切って捨ててしまったからだ。


 邪魔するヤツは容赦しない――、そう思っていたのだから……。

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