本当に愛おしい君の唇
 と言うと、彼女が、


「ええ」


 と返し、その場でボールペンを使い署名して、持っていた印鑑に朱肉を塗って押し、


「これでいいのかしら?」
 

 と言った。


 半分笑ったような顔をしている。


 してやったりという感じなのだろうか……?


 治登はその書類を封筒に入れて、週明けにでも新宿区役所に届け出るつもりでいた。


 直美の方も洋介に離婚届を書かせ、子供二人は自分が引き取ると明言して、いずれ離婚する。


 互いにもう満たされない結婚生活は終わりだと思いながら……。


 そして治登は直美との新しい生活を始める。


 籍を入れられるまでの半年間は同棲するつもりでいた。
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