本当に愛おしい君の唇
してもきつくなかったよ。今はとても無理だけどな」


「治登さんって、若い頃から活躍してたのね?」


「うーん。活躍っていうか、まだあの頃はコンピューターもほとんど普及してなかったし、旧型のマシーンをやっと使いこなすぐらいで、ルーデルも無名だったよ」


「それが今は財界では知らない人がいないぐらいの大規模なものになったわけだからね」


「ああ。俺も一代でそこまでの規模にしたわけだからな。さすがに創業者の苦労ってのはほとんどの人が分からないんだけど」


「あたしはそんな治登さんにこれからも付いてくわ」


「ずっと一緒にいられるよな?」


「ええ」


 直美が頷き、治登がまた唇を重ねる。


 濃密に抱き合いながら、口付けを交わす。


 治登は思っていた。


「互いにある程度年齢が行ってるから、苦労が分かり合えるんだな」と。
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