本当に愛おしい君の唇
第6章
    6
「ビールしかないの?」


「ちょっと待ってて。探してみるわ」


 直美が立ち上がって、冷蔵庫へ向け歩き出した。


 アラフォー女性らしく、幾分特徴的な加齢臭がする。


 治登がベッドに横たわったまま、彼女の後ろ姿を見て、寛ぎ続けていた。


 本当はワインを飲みたいのだ。


 一際冷えた代物を。


 治登は普段から金を持っているので、出し惜しみしない。


 実際金持ちは、少し高いものでもいいものがあれば買っていくのだ。


 焼酎やワインなども、贅沢なものを飲むことが多い。


 治登は将来に備えての蓄財の類が一番嫌いなのだった。


 確かに株式会社ルーデルは一流商社だが、先までは分からない。

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