本当に愛おしい君の唇
　自分よりも一回り以上若い男と浮気しているようだ。


　治登は新宿にある商社の取締役で、仕事をしながら思っていた。


「有希は若い男に抱かれてるんだな」と。


　昼間は忙しい。


　昼食に近くの高級ランチ店で肉類を中心とした美味しいものを食べながら、治登は部下たちと仕事に関して話し合う。


　せめて昼食時ぐらいは仕事のことを忘れてもよかった。


　ただ、そうはいかないのが大手商社で役員を務める人間なのだ。


　食事の合間に「あっちの会社の今の状況は？」とか「株価は下がってないか？」などと話が飛ぶ。


　治登は昼食を取りながら、直属の部下たちとそんな話ばかりをしていた。


　そして昼を食べ終わると、社へ戻り、午後からの業務をこなし始める。


　治登は取締役専務で、いつもは専務室にいた。


　下の人間たちから回されてきた資料を読みながら、合間にパソコンのキーを叩く。
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表紙・目次

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