本当に愛おしい君の唇

「原点に戻ろう」と。


　二十歳のときに起業し、もうかれこれ二十年以上前に会社を作ってから、新宿区内にある安い家賃のオフィスで旧型のパソコンを並べ、仕事をしていた頃が懐かしい。


　治登はどうすれば今の会社が盛り立てられるのか、考え続けていた。


　結果として出たのがベンチャースピリッツである。


　商社としては大手なのだが、老舗(しにせ)ではない会社が、どうやったら生き残っていけるのか……？


　方法としては二つあった。


　一つは若い人間を入れること、もう一つは社の構造を一新することである。


　社員たちにとって、より働きやすい会社を作りたかった。


　皆が仮に心のうちに不満を抱えていても、決して組織として崩れないようなものを作ろうと。


　これが治登の念願なのだった。


　かねてより考え続けていたことである。