本当に愛おしい君の唇
 いくら四十代後半の治登でもパソコンぐらいは一通り使いこなせるのだ。


 キーを打ちながら、与えられた業務を淡々とこなす。


 そして大概、午後七時過ぎになれば、昼同様仲間内で飲みに行くのだ。


 大体新宿というと飲み屋がたくさんある。


 治登たちが行くのは、段階で言えば上の下ぐらいの場所だった。


 ビールから入ってカクテルや日本酒、焼酎などを飲む。


 酔いが回ればそのまま眠ってしまいそうで、すぐにタクシーを呼んでもらい、新宿区の西の外れにある自宅まで飛ばす。


 そんな毎日を送り続けているうちに、治登は直美と知り合った。


 ただでさえ、男女の出会いというのはレアなのだが、治登自身予測していないぐらいの偶然で彼女と出会う。


 それは都内に本拠を構える企業数社が集まって、立食式のパーティーをしたときのことだった。


 会場の受付に直美がいて、治登が、

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