本当に愛おしい君の唇
　課長の古賀原のことだ。


　治登だけでなく、他の人間たちも嫌がっていた。


　何もしないで給料をもらうというのは一体どういう神経をしているのだろう……？


　社の内部でもいろんな噂が飛び交っていた。


　新年度の人事に着手する旨だ。


　社長の大多はこの季節になると、必ずと言っていいほど頭を悩ませる。


　人事の件で頭が痛いからだ。


　社員の給与をカットすることなく、現状維持で調整しているようだが、会社の組織内にいる人間たちをどうするかが焦点となっていた。


　治登は大多に意見することが出来ない。


　一応同じ社にいて、部屋こそ違え、ほとんど同じような仕事をしているのだから、自分の思っていることを伝えてもいいかもしれないと感じてはいる。


　だが、やはり治登は大多が社長という身なので、威圧感を覚えることがあった。


　社の看板に泥を塗るようなことはしない。
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表紙・目次

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