本当に愛おしい君の唇
 まあ、下の人間が泥を被(かぶ)ることはあるが……。
 

 そして二月は逃げるようにして去っていく。


 三月に入れば、また暖かくなる。


 その代わり、頭は微熱を帯び、目や鼻には花粉が入ってきて、辛い季節の到来だ。


 治登は花粉症の持病があった。


 結構程度がひどいのだ。


 さすがにマスクまではしないのだが、鼻や喉をケアする品物は欠かさず持ち歩いている。


 治登は花粉症のケアをし始める時期から、人事のことで悩みつつあった。


 確かに会社でも専務まで行くと、事実上のトップであるのだから、課長などの下の人間たちのことも気に掛かる。


 だが、古賀原は基本的に仕事をしない。


 いや、しないというよりやる気がないのだ。


 新入社員で入ってきた頃の謙虚さはまるでなくなってしまっている。

< 43 / 171 >

この作品をシェア

pagetop