本当に愛おしい君の唇
「せいぜい冬山で過ごしてくれよ」と言いたくもなったし、実際古賀原にはそれ相当の処分が必要だろうと思う。


 石松や、石松の更に下にいる西耕介もセットで飛ばされればいいのにと思いながら……。


 あいつらはバカなのだ。


 会社員としての自覚に欠けている。


 治登は歩きながら、大多がどんな処分を下すのか、見ものだと思っていた。


 今日の昼食もランチ店で食べる気でいる。


 確かに一人で行くと寂しいのだが、致し方ない。


 新宿の街を練り歩きながら、治登は春の暖気を感じ取っていた。


 暖かい。


 この季節もすぐに終わり、また新しいシーズンがやってくるのを思っていて。


 治登は不可思議な思いをすることが間々(まま)あった。


 確かに自分は若くないので、渋谷や原宿などの目抜き通りを歩くことはまずない。

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