本当に愛おしい君の唇
 新年度からルーデルは新装開店するものと思われる。


 新装開店などと言うと、田舎町のパチンコ店などと同じで、聞こえが悪いのだが……。
 

 食事を一通り取り終え、コーヒーを飲みながら、治登は書店で買っていた漱石の文庫本を取り出して読み進めた。


 今はケータイ小説がブームだ。


 以前ほどじゃないにしても、まだかなり人気がある。


 治登はケータイで小説を読む気にはなれなかった。


 確かにメールぐらいならケータイからするのだが、いざ小説を読めとなると、躊躇ってしまう。


 それにやはりある程度年齢が行っていて、ケータイで読むより、紙の本で読んだ方がいいのだ。


 チカチカするディスプレイはやはり見にくい。


 治登は小説を読みながら、コーヒーを飲む。


 この時間が一日で一番贅沢なのだった。

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