本当に愛おしい君の唇

　古賀原たち無能社員が地方に飛ばされることは分かっていたし、治登も現時点の事態を落ち着いて分析することが出来ていた。


　後釜に誰を据えるかまでは、聞いていない。


　治登は直美と手を繋いで歩き出す。


　近くに肉料理を専門に扱う店があるのだ。


　新宿の街は自分の庭のように知っている。
　

　どこに何があるかまで。


　そしてどうすれば、街で楽しく過ごせるかも。


「肉料理食べたいだろ？」


「ええ。あたしもお腹空いちゃってて」


「君は昼はあまりいいもの食べてないよね？」


「うん。安いランチ店に行くか、朝出勤するときにコンビニで買ってたおにぎりとかサンドイッチなんかで済ませてるわ」


「質素だね」