本当に愛おしい君の唇
た。


 この会社を一代で終わらせるわけにはいかないと思いながら……。


 そして世界中に繋がっているこの商社が一層発展していくことも考え合わせていて……。


 その点で言えば、古賀原たちを事実上追放したのも正解だった。


 本社に相応しくない人間は、支社に回ってもらうのが一番いいからだ。


 治登は今回の処分に関して、樺島の実力を認めていた。


 樺島には常務としての実力が十分ある。


 当面、本社は少数精鋭型で動かすつもりでいた。


 変な新興宗教に嵌まり込んでいる人間は、年中寒い札幌で働いてもらうのがいいと思い……。


 新宿の洋風料理屋に入ったのは、その日の午後九時を回る前だった。


 治登はステーキを食べるつもりでいたし、直美にもある程度値が張るものを食べてもらおうと思っていたのだ。


 互いに慰労し合うほど、いいことはない。
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