本当に愛おしい君の唇
 さすがに真夏に大雪が降ることはなかったのだが、一際不便な場所だった。


 それに石松も西も地方へと転勤になっている。


 役に立たない人間たちにルーデル本社の運営を任せるわけにはいかないのだ。


 この会社は元々、治登と現社長の大多、同じく常務の樺島、それに今大阪にいるIT起業家の大園の四人で始めたベンチャー企業だった。


 あの当時は若かったし、皆学生か、学校を出てすぐぐらいの人間たちで経営していたので、活力と情熱に溢れ返っていた。


 それから古賀原や石松、西などが入ってきて、水ぶくれ体質の企業となったのだ。


 治登はさすがにルーデルが日本でも最大手の商社に成長したことを誇りに思っていた。


 自分が作った社が物流の軌道に乗っているのだ。


 ある意味、自分たちがこの日本を動かしていると言っても過言ではない。


 それに日本各地だけじゃなくて、各国の主要都市に支社を作っているので、資金は十分回っていた。


 治登はいずれ社長になろうとしている。

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