本当に愛おしい君の唇
 確かにバリバリ現役でやっている人もいるかもしれない。
 

 ただ、治登は感じていた。


「もうそろそろ、ルーデルの後継者を考えないといけないな」と常に想いを巡(めぐ)らせている。


 社長の大多は治登と同じぐらいの年齢だが、いかんせんスタミナがない。


 長い期間勤め上げるだけの力がないのだ。


 常務の樺島も部下に対する采配(さいはい)は上手いのだが、年齢には勝てない。


 つまり消去法で行くと、大多と樺島、それに治登自身もいずれは引退し、新しい後継に社の運営を任せるしかないのである。


 今の時点で治登が考えているのは金兼原建設に嫁に行っている令香の息子を養子にするということだ。


 令香の夫の賢三は、彼女との間に三人子供を作った。


 今、長男は十歳で、長女が五歳、それに次女が三歳だ。


 治登の甥っ子は某有名私大の付属小学校に在籍していて、誰に似たのか分からないのだが、勉強の出来はよかった。

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