本当に愛おしい君の唇
 金兼原建設もどうやら今、準大手ゼネコンとして軌道に乗り、順調らしい。


 治登は妹の産んだ子との養子縁組まで視野に入れていた。


 せっかく立ち上げたルーデルを自分一代で終わらせるわけにはいかないと思いながら……。


「そろそろ出ようか?」


「ええ。……今からホテルでベッドインね」


「ああ。俺も気分が高まっちゃってるからな」


 治登が頷き、直美の手を取って、テーブルから立ち上がった。


 二人で春の陽気に包まれながら、夜の新宿を練り歩く。


 互いに手を握り合ってゆっくりと。


 恋人たちの熱い夜はこれからなのだから……。


 そして愛を誓い合えている者同士で過ごす夜はとても楽しみなのだし……。

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