まあるい地球
紗香には彼氏がいた。名前は慎吾だ。背が大きく、だから広い背中が、大好きだった。その背中に後ろから抱きつくのが、大好きだった。

が、それももう出来ない。
なぜなら、いつの日からだろう、慎吾に触れる事が出来なくなったのだ。出来ないのは、紗香だけではない。友達の梓も美雪も彼氏に触れる事が出来ない。
「なんでなの?」
手を伸ばす。が、何かに阻まれる。慎吾との間に、厚い見えない壁がある。
「紗香!」
慎吾も手を伸ばす。なんとか壁を乗り越えようと試みるが、見えないからうまくいかない。
「くそ、なんなんだよ。」

今日は五メートルくらい離れていた。昨日は三メートルくらいだった。きっと、明日は七メートル離れる。そんな気がした。
紗香は少しでも近くなれるように、携帯を抱えながら眠りについた。
「慎吾・・・。」
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