【K.A】Alice in a BoX
突然キスをされて、腹がたったのに。

…抵抗することも、怒ることもできなかった。

短いようで、長く感じられたその一瞬のキスに、ありすは胸の中にもやもやとしたものが渦巻いた。

ラビーの唇が離れてすぐに、ありすは口を開いた。

「なんであんたが泣くのよ」

いつもニコニコと笑っているラビー。
目が覚めたときからずっと側にいて、ありすの身の回りの世話をしてくれていた。

時々鬱陶しく思うこともあったけど、ありすをすごく大切に思っていてくれて、優しくて。だからこの数日間、文句を言いながらも、ありすもラビーのそばにいて、ラビーが一緒に住んでいることにも何も言わなかった。

「僕はずっと、あなたが目を覚ますのを待っていたんです」

ぎゅっと抱き締めてくるラビー。ありすの頬に、暖かいものが触れた。

「あなたがあの箱の中にいるときからずっと、ぼくはあなただけを見てきたんです」

ラビーの腕の力が少し強くなる。

「僕の世界には、あなたがいなくちゃダメなんです」

ラビーの言葉に、ありすは小さく溜め息をつく。

「…ごめんね、単なる八つ当たりだった」

ありすの言葉に、ラビーは首をかしげながらじっとありすの目を見つめた。

「正直言うとね、本当にそんな呪いみたいなのがあるなんて、信じられないんだよね」

「ありす…」

苦笑しながらありすは続けた。

「みんなが心配してくれてるのも分かるんだけど、どうしても信じられない気持ちの方が大きいっていうか…」

小さく溜息をつく。

「それに、人を好きになるのは一瞬でも、結婚って一生でしょ?そんな一週間なんて短期間で決められないよ」

ぎゅっと唇をかみ、ありすは俯いた。

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