UP TO YOU!!
2.None of your Buisiness
キャーーー!!という歓声が、かすかに外まで響く。
Sound Space≪Chieri≫
という看板の前に立って、俺はため息をつき、キャップをかぶりなおした。
結局来てしまった。
時刻は20時ちょっと前。
もう始まっているだろうか。
「あ、陽介。
今始まったとこだぞ」
「混んでます?」
「毎度のことながら、満員御礼でございます。」
ここでも受付の、桜井さんが深々と頭を下げる。
いや、別に俺は何もしてないんだけど。
今日のライブは対バン形式で、トラジャムを挟んで他に2つのバンドが出演する。
トラジャムはもう何回か単独ライブを成功させていたが、彼らが出ると客が集まるので最近はまた対バン形式のライブが増えてきているらしい。
ドアを開けると、昨日散々合わせた新曲が俺の耳をいっぱいにした。
観客は曲に合わせて飛んだり跳ねたりしていて、床が揺れているみたいだ。
「ほらほら、もっとーーー!!!」
カズの煽りに、客は更に勢いを増す。
前列のほうは、もうグチャグチャだ。
「トラジャムさいっこう!」
「俺、この新曲、1番好きかも」
後ろにいる客からそんな声が聞こえた。
ほらみろ、言った通り。
何をしたわけでもないのに、なぜか俺は誇らしげになった。