UP TO YOU!!


「あれ、陽平ー。
帰るのか?送ってってやるよ」

「あ、マジっすか。」

「おー、これで鍵あけといて」


投げられた車のキーをキャッチする。
助かった。

「じゃあ、すいません」

少しだけ口角をあげて、女の横をすり抜けると、後ろで「逃げられたー」という耳につく語尾を延ばす声が聞こえた。


「お前も大変だな~」

シートベルトをつけながら、桜井さんが言う。
「キャップも効果なくなりました」と、さっきの女たちが言っていたことを話すと「あはは、マジか」と笑われた。

「笑い事じゃないですよ。
高校生のバンドとかって中途半端に有名で、中途半端に手が届きそうだから駄目なんです」

「ま~確かに。
しかもキョウは、トラジャムの中でも顔ファンってゆーか、女のファンが多いからなあ」


緩やかに発進しながら、車は右折する。
BGMは、人気サッカーゲームのサントラ。


同じ顔でも、俺はドラムも叩けないし、お前らの好きなその顔とは違うんだよ。と騒がれる度に思う。
同じ顔ならそれでいいなんて、そんなはずない。
俺が1番よく分かってる。


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