UP TO YOU!!
「陽平の部屋、久しぶりだなっ」
部屋に入るなり、大きく深呼吸する麻美に、おととい掃除しといてよかったと思う。
「3ヶ月ぶりくらい?」
「ゴールデンウィーク以来だから、それくらいかー」
俺は元々自分から誘うほうではなかったから、麻美が勉強に忙しくなってから遊ぶ回数は大幅に減った。
それに、麻美の前回の模試があまり揮わない結果だったのを知ってからは、ますます誘いにくくなっていた。
だからこうやって家で会うのは、本当に久しぶりだ。
「陽平、今日何してたの?
予備校にもいなかったよね」
「昼間は家で勉強して・・夜は、ライブ行ってた。
京太たちの」
「あ、新曲出したって、ブログ読んだよ。
そっか、キョウ君は・・就職?」
「就職っつーか・・フリーター?」
麻美は、トラジャムのファンだ。
俺の影響で好きになったらしいが、そもそも俺はファンじゃない。
「あれ?麻美ちゃん、来てたの?」
「あ、おじゃましてまーす」
噂をすれば。
トラジャムのドラマー様が、人の部屋に合図もなくズカズカと入ってきた。
ライブで見たままの、カーキーのマッチョタンク1枚を身に着けている。
麻美も、満面の笑みで答える。
「お前、ノックくらいしろ」
「いや~、陽平が麻美ちゃんに変なことしてないか抜き打ちチェックを・・。」
「してないから。
で、なんの用?」
「いや~、特に用はないんだけどね。
麻美ちゃんいるかな~っていう確認。
あ、麻美ちゃん今日泊まってくでしょ?
お袋には言っとくから、気にせず好きにしてね」
そう言って、京太は慌しく部屋を出て行った。
一体なんだったんだ。