UP TO YOU!!


いつの間にか眠っていた。
パソコンから繋いだイヤホンから、もう音は聞こえてこない。

肩を2回叩かれて、薄目を開ける。
麻美?
いや、そんなはずはない。

「もう、3時間なるよ」

「え・・?」


ぼんやりとした視界が徐々にはっきりしてきて、ようやく目の前の人物が誰か分かった。
受付の店員だ。


「ここ、自分で出ないと、勝手に加算されちゃうから。」

何のことか分からなかったが、パソコンの中の時間を見ると、店に入ってからもう少しで3時間が経とうとしていた。
料金の話か。

「あ、すいません。
・・ありがとうございます」

ペコ、と頭を下げると、店員は少しだけ笑って去っていった。

その笑みを見て、この店員は麻美に全然似てないことに気づいた。
なんで似てるなんて思ってしまったのかと、ポリポリと後頭部を掻く。

入ってからすぐ寝てしまったらしく、俺の手にはまだ第1巻があった。
また、読めなかったな。
そう思いながら、ため息をつく。



店を出たのは、18時だった。
今日はまだ1度も勉強してないと思い、少しだけ焦る。

けれど、明日からは予備校で夏の特別授業だ。
今日くらい、勉強しなくていいか。

やっと起きはじめた頭の片隅で、そんなことを思いながら、俺は家へと歩を進めた。




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