UP TO YOU!!
「いらっしゃいませ~」
外とは比べ物にならないくらい涼しい店内に、明るい店員の声。
「当店のカードはお持ちですか?」
財布からカードを探して差し出すと、
少しだけ麻美に似ていて可愛らしい女性店員は、ニコリとしてそれを受け取った。
受付を済ませてから、
選択した席に大量の漫画とコーヒーを持って向かう。
ふかふかのソファに座ると、
何か得体の知れない感覚に襲われた。
開放感のような罪悪感のような。
きっと勉強をしていないせいだ。
毎日毎日勉強している自分に嫌気が差して、予備校を出てきたのに、
そんな感覚に陥る自分が心底嫌になる。
「よし、」
俺は、この3時間は漫画に集中しようと決意して、両袖をまくりあげる。
頭の中は、罪悪感やら自分への嫌気やら、様々な感情でゴチャゴチャしたままだったが、全てを押し潰して、第1巻に手をかけた。
そんな時、隣の席から突然大きな音が聞こえた。
と、同時に若い女の「ヤバ !」という声。
「ちょっと、もー何やってんのー」
「いきなりヘッドホン抜けたんだもん!!びびったー」
隣の席は2人用らしく、声は2人分する。
口調的に高校生だろうか。
本人たちは小さな声で話してるつもりだろうが、会話は全部筒抜けだ。