UP TO YOU!!
「てかさー西高のトラジャム!
新曲だしたって!」
「え、まじ~?
またネットにアップされるかな」
「そのうちされるでしょ~
早く聞きたいわ~」
トラジャム・・トラフィックジャム、
この辺りじゃ有名な高校生ロックバンドだ。
4人とも、俺の通う南高の隣の
西高の軽音部所属で、全員イケメン
・・というかオーラがある。
更に、実力も伴っているときたら、
人気が出ないはずがない。
「やっぱさ~、
あたしは“ALL OUT ATACK”が好きかな~」
「あ~確かに~、
でもさ~バラード系も良くない?
ほら、“CRUSH ON YOU”とかさあ」
甲高い女子高生の声に、
心の中で起きた得体の知れない感覚。
何が俺をこんなにもイライラさせるのかは分からないが、隣のその甲高い声が引き金を引いたのは確かだった。
とにかくいてもたってもいられなくなって、まだ店に来てから5分も経ってないが、帰ることにした。
受付に置いてあるベルを鳴らす。
奥から出てきたのは、
さっきと同じ麻美似の店員だ。
「どうされました?」
「すいません、やっぱ帰ります。」
自分でも驚くほど冷たい口調で言ってしまった。
店員が少しだけひるむのが分かる。
「あ・・えっと・・、
申し訳ございません。
お客様の場合、
パック料金ですので料金は変わらないのですが・・」
5分で1000円かよ。
また少しイラっときたが、もうどうでもよかった。
「別にいいです」
財布から5000円札を抜き出し、トレーの上に置く。