UP TO YOU!!
『いつものスタジオ』に着くと、
もうすっかり顔見知りになった受付の桜井さんに「新曲できたの?」と声を掛けられた。
「らしいっす。」
「お、マジ?俺、16時で上がりだから聞かせてよ」
「はい、それまでに仕上げときます」
重いドアを開けると、
俺が入ってきたのを合図に爆音が止む。
「おー陽平、早かったな」
「漫喫にいたから」
「おいおい、勉強しろよ?受験生だろ?」
ベースの有也、通称ユウが
ベンベンとベースを鳴らしながら片眉を上げる。
ユウは、トラジャムの中では1番大人で、話の分かるやつだ。
「うるせーよ、ニート組が。
つーか、隣の女子高生が五月蝿くて5分で出てきたし」
「ニート組じゃなくて、夢のあるフリーター組と言え。
お前だって、男子高校生じゃん」
「そういう問題じゃねーんだって。
話の内容がさ、トラジャムがどーたら、新曲がどーたらって。
不快で不快で。」