両手いっぱいに溢るる涙
駅から、自転車に乗って制服のままバイト先に向かう。
iPodで音楽を聴きながら、道を走るのは、折笠葉織(おりかさ はおり)。
高校生一年生。
今、やるべきことはバイトをして金を稼ぐこと。
何の為に使うか??
それは、定期代や授業料、更に修学旅行積立金に主に払うため。
余ったら、貯金か、自分のお小遣。
葉織の家は母子家庭。
母一人に全部任せられないから、高校に関するお金は全部葉織が払ってるん。
バイト先に着いて、裏口から事務所という名前の、かなり狭い部屋に入る。
更衣室はたった一つ。
というか、カーテンで仕切るだけのものを更衣室と呼べるのか不明なのだが、バイトの皆がそう言ってるので葉織もそう呼んでいる。
更衣室で着替えて、鞄を縦に細長いロッカーに入れる。
タイムカードを切って、ホールに入った。
すると、先輩から「おはよー」と声を掛けられるので葉織も「おはようございます」と返した。