両手いっぱいに溢るる涙
葉織は、賑やかな先輩達と仕事が出来るこのバイトが好きであった。
高校生時給700円。
でも、賄いあるから十分。
それに、二年生になれば店長が時給、上げてあげると言ってくれた。
例え、それが10円だけ上がったとしても全然いい。
実際、どれくらい上がるか分からないが。
それだけで給料違ってくる。
・・・・・・かなり、貧乏な印象与えてしまっている。
そこまで貧乏でない・・・・・筈だ。
普通の家庭より収入は少ないが・・・・・。
「はーちゃん、もうあがっていいよ」
とキッチンから店長に声を掛けられる。
「あ、はい」
と返事をしてから、ホールの先輩に「お先です」と頭を下げて事務所に戻った。
事務所から、キッチンの先輩にも挨拶する。
すると、「お疲れさん」と笑って答えてくれた。
着替えて、家に帰る前にシフトを見る。
携帯のメモ帳に記録して事務所から出た。
秋の夜は、少し肌寒い。
葉織は、少し身震いした。
早く家に帰ろう、そう思って自転車に乗った。