猫になった僕
車いすでも僕みたいに自分で運転できる人もいるし、お姉さん達に押してもらわなければどこにも行けない人もいる。

それから目の見えない人やお話が出来ない人もいる。

僕は足がうまく動かない。
それからあんまり難しいことはよくわからない。

だけど僕には足の代わりに車いすがある。
僕は車いすのことを「僕の足」って呼んでいる。
銀色の車輪のついた銀色の僕の足。
銀色の車輪は僕をいろんなところに連れて行ってくれる。

僕はあんまり難しいことはよくわからないけど、養護学校で字は勉強したから本や、新聞やテレビの番組表は読める。

大好きな動物のテレビや旅行のテレビが何時にやるかわかるし、動物よりも旅行よりも大好きなピラミッドの本だって一生懸命読めばきっとわかる。

それにあんまり難しいことは、あおぞらのお兄さんや、お姉さんが教えてくれるし、僕のパパが何でも教えてくれる。

でも、もっともっと勉強したい。

もっともっといろいろ見てみたい。

もっともっといろんなものにさわってみたい。

もっともっといろんな事を知りたい。

もっともっといろんな事がわかりたいんだ。


いろんな事を考えながら、猫になった僕は、そうっと廊下のはしっこを歩いて食堂に着いた。

はしっこを歩かないと車いすにひかれちゃうかもしれないからね。
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