猫になった僕
僕は一生懸命考えた。
たくさんたくさん考えた。
いくら考えてもわからなくて、猫になった手で猫になった頭を、ギューッてした。
猫の長い爪が猫の頭をギューッとやった。
 
 「痛いっ!」
猫の爪がギューッとして、びっくりした僕は飛び上がってひっくり返って、
今度はテーブルの足に頭をぶつけてしまった。
 
 あれ?
変だよ?
今度は痛くない。
猫になった僕の体はテーブルの足をすうっと通り抜けてしまった。

 僕は猫の爪でギューッとやってしまった頭を猫の手で、なでた。
あったかくって、すべすべで気持ちいい。
 あんなに痛かった頭がすっかりよくなっちゃった。

 いったいどうなってるの?
猫になった僕の体は、テーブルの足をまるで幽霊みたいにすり抜けちゃったけど、
猫の手でひっかいた僕の頭は飛び上がるほど痛かった。 
  
 僕はますます、僕がどうなっちゃたのか、わからなくなっちゃった。

 猫になった僕の体は、マリさんや僕には見えなくて、
猫になった僕の体は、テーブルの足をすり抜けちゃうけど、
猫の手でひっかいた、猫になった僕の頭はすごく痛い。
 なんだか難しくて僕には何がどうなったのかさっぱりわからないけど、
だけど、きっとこれは夢じゃあない。
 だって夢だったらあんなに痛いはずないもの。
もし夢だったとしても、あんなに痛かったらきっと目が覚めちゃう。
だって、
 ずーっずーっと前に、
まだ僕がお家にいた頃に、お空を飛ぶ夢を見た時だってそうだった。




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