猫になった僕
だあれもいない。

きょうちゃんのお部屋、ナベさんのお部屋、和美さんのお部屋。

やっぱり誰もいない。

 廊下をお掃除しているカツさんにも、しばさんにも僕は見えないみたい。

とっても淋しい。

いつもだったらみんなが僕に声をかけてくれるのに。
淋しくて僕はうつむいてとぼとぼ歩く。

長い廊下をとぼとぼ歩く。
廊下はいつもピカピカだよ。
猫になった僕の顔がぼんやり映るくらいに。

僕は猫になった僕の姿をぼんやり見ながら、とぼとぼ廊下を歩く。

どこに行ったらいいのかわからなくなった僕は、ピカピカの廊下をとぼとぼ歩く。

その時ピンポーンってナースコールの音が、氷みたいにピカピカの廊下に響いた。

いつもは聞き慣れたピンポーンに僕はちょっとびっくりして顔を上げた。

顔を上げた僕はピンポーンの音よりももっともっとびっくりしてしまった。


< 24 / 39 >

この作品をシェア

pagetop