キミとボク。
始まりの鐘
好奇の視線を一身に受ける。

あぁ、転校って憂鬱…

そんなことをぼんやり思いながら、担任の長ったるい話が郁弥の耳をすり抜ける。

興味津津に見つめてくる個性的な目、目。
その中の一つとばっちり視線が絡んだ。
相手は二コリ、と笑った。
見るからに人気者のオ―ラを纏った、少し茶色のかかった短髪が一際目を引く男子。

「星崎、よろしゅうなぁ!!」

クラスがどっ、とわく。
教室中のあちこちから声をかけられ、驚いたあたしは一歩後ずさった。
それを察してか否か、担任が軽く背中を押す。

「そうじゃ、都月の後ろが空いちょるけん、そこに座りぃ」
「え、あー…」
「皆、仲良ぅしやれなー」
「あ…」

間延びした声で一歩踏み出すと、都月が手招きした。

「俺の後ろやけ。星崎、よろしゅう」
「…うん」
「分からんことあったら教えちゃるよ」
「ありがと」

席に着くと、担任の話が始まったのにも関わらず、都月が後ろを向いた。

「俺んこと翔ち呼んでなー」
「なんで?」

冷たい態度をとってるのに気付いているのかいないのか、都月は笑顔を崩さないままだ。
郁弥は頬杖をついて窓越しに桜の木をみた。
緑が良く茂っている。セミの鳴き声が聞こえる。
おもむろに都月が言葉を返した。

「そりゃあ、早ぅ仲良ぅなりたいきに」

こうしてはじまったあたしの夏―――。

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