キミとボク。
第壱章
ここ、岡山に引っ越して来たのにはワケがあった。
元々住んでいた東京は、自分には『合わない』。
いや、自分が異常過ぎたのかもしれない。

ここに来たからには前みたいなつらい思いはしたくない。

もう、人とは深く付き合わないって決めたんだ。
人間は、人間という生物はどれだけ仲のいいフリをしていてもすぐに裏切る。
人を傷つけることなんて厭わない。
―――自分も入っているかもしれないが。

こんな風に構ってくる、上辺だけのポーズなど、郁弥にはうざったいだけだ。

信じて傷つくくらいなら最初っから孤独な方がマシだ。

ふと目蓋を伏せるとすかさず翔が口を開く。

「なぁどうした?おめえ腹でも悪いんけ?」
「…別に」
「…曖昧じゃのぅ」

なんとなく噛み合ってない話に翔は苦笑する。
それでもまだ郁弥を気にかけているようだった。
ここぞとばかりに無視してやったら翔は首を竦め、前を向いた。
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