生きて。笑いたい。
「………………っ!」


あたしはハッとして、咄嗟に吉濱を思いっきり突き飛ばした。



吉濱は少しだけふらついたけど、直ぐに立ち直った。



その行動を見て、悲しくなる。




あたしはさっき。少し押されただけでも倒れそうになる所だった。




なのに吉濱は、



強い衝撃に耐えられて。


自由に走れる体を持っていて。


痛くなることのない心臓を持っていて。



「お前ら~、まだ着替えてないのか……って神田!?どうしたんだ!?」


「…………っ。」



その時、偶然廊下を歩いていた体育の先生があたしを見つけてくれた。





良かった…………


そこで安心してしまって。あたしは膝をガクンッと床に着いた。



クラスのざわめきが遠くに感じる。



意識がどんどん無くなってくる。




「………ごめん。」

何故かそう呟いていた。



誰に対してか。何に対してか分からない。



「ごめん……なさい…。」


けど、あたしは謝っていたんだ。





………そこで途切れたあたしの視界。



夢の中でも、あたしは謝っていた。





きっと。さっき吉濱の事をズルいと思ってしまったから。




自分の体だけ違うのを、吉濱と比べて。勝手に怒った。



羨ましいと思ったから。

吉濱の全てが。




だからごめんなさい。


あたしはホントに馬鹿だ。




羨ましいと思ってはいけないのに。この体があたしって事なのに。




生きていられる吉濱に、八つ当たりをしてしまっていた。



ダメ。


……あたしは今更、そんな事思ってなんかいられない。


だって死ぬんだからね?



3ヶ月後には、どうせもう無い身体なんだからね?




それならこの身体でいいじゃん。


いいじゃん。


いいじゃん。




自分に言い聞かせるのは、哀しい。


けど、独りだからしょうがないんです。
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