生きて。笑いたい。







俺らは、どちらともなくキスをした







お互い泣き顔だったけど、幸せなキスだった。






「…ははっ思い出すな………俺らが初めてキスした時の事」


「ん………そっか。これが初めてじゃないんだよね…。」



「………でも。吉濱 陸になってからしたのは、初めてだ。」






そう言うと、神田はビックリした顔で俺を見た






「………記憶無くしてから。一回もしてないの?」



「あぁ」



「………嘘…何で……?」








確かに変だよな。







友姫を忘れたのに。誰とも何とも無かったんだ








「…………元々。俺は、本当に好きな奴だけを好きになるって決めてたから…むやみには遊んだりしなかったってのもあるけど………」



「うん」



「どこかに。友姫がいたんだ」






あの頃、誰だか分からない。けれどとても愛しい人が俺のなかに居たんだ







なんにもわからない。




ただ愛しいとしか言い様のない人が









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