生きて。笑いたい。
そんな感情に浸っていながらも、校門をくぐった。すると…
「神田!」
「え?」
後ろから聞こえた声に振り返ると。校門の端の方に人影があった。
その人影がだんだん近付いてくる。
「……吉、濱?」
「お前遅い!どんだけ待ったと思ってんだよ!?」
そこに居たのは、吉濱だった。
黒い髪が、暗闇の中でもはっきりみえるほどに輝いて見える。
「…何で居るの?」
「何でって……。お前カバン置いて保健室行っちまったから困るんじゃないかと思って。」
そう言えば、あたしカバン持ってない…。
こんな事に気が付かないなんて、あたしどうかしてる
「ごめん……。」
そう言って手を差し出したんだけど、あたしの手に来たのはカバンの取っ手じゃ無かった。
「え!?ちょ、吉濱!?」
「陸って呼べって。」
「じゃなくて何この手!カバン帰してよ!!」
あたしの手に来たのは、吉濱の手だった。
そのまま歩き出しちゃったからもうどうしようも無い。
「もう遅いから、送ってってやる!」
「そんなの別に……。」
……あれ?
…そう言えば、吉濱はずっと待ってたんだよね?
こんな暗闇の中、ずっと…
「ごめん……寒かったよね?」
「いんや?別に?」
1月の夜なんて、寒いにきまってるのに……。
しかも握ってる手冷たいじゃん…。