生きて。笑いたい。
吹き抜ける風が、冷たい。
1ヶ月前には、
こういう風が吹いても冷たいと思わなかった。
『死んだらこの風より冷たくなる』
そんな考えを思っていた気がする。
けど…今のあたしは…………………
そんなとき、横から声がした。
「…………神田…?…。」
「え…………………」
「何してんだよ?」
声の主を見てみると、そこには缶のジュースを持った山本が居た。
茶色い瞳の無表情であたしを見てくる。
あたしは咄嗟に目をそらしてしまった。
ソレを見た山本はあたしに近付いてくる。
あたしは逃げるように後ろを向いて歩き出した。
けど山本も、あたしの後ろを歩いてくる。
「…………………。」
「…………………。」
お互い無言で
遂には玄関の近くにまで、地味な追いかけっこは続いていた。