君のもの。Ⅱ
「待って…、啓太ぁっ…」
「ごめん、タカ…。もう先輩が来る…」
啓太は階段の方を見ながら静かに呟いた。
そして僕に向き直り、涙で濡れた顔でニコッと笑った。
「さよなら…、タカ」
「…啓太っ!」
すると、啓太の身体がすうっと透き通って見えなくなってしまった。
「……啓太ぁっ…!」
僕はぺたんと地面に座り込んで泣いた。
…ただ悲しくて、泣いた。
「タカっ…!!」
いきなり名前を呼ばれて、驚くあまりに身体がビクッと跳ねた。
「…こ、琴夜っ!」
「タカ、どぉしたのっ…!?」
琴夜が驚いた様子で駆け寄ってくる。
「どぉして泣いてるのっ!?…何かあったっ!?」
琴夜は、座り込む僕の身体を軽々と抱き上げた。