君のもの。Ⅱ
「兄ちゃん!これ、ありがと!」
弟の司に貸していたプリントを手渡された。
「じゃあね、兄ちゃん!」
「…うん」
司が教室の中へと戻っていく。
啓太が死んだことは司も知っている。
でも司は僕を気遣って、そのことには触れないでいてくれるんだ。
司…ありがとう。
ふと、司の隣に目をやる。
僕は自分の目を疑ったんだ。
啓太、僕は一瞬、本当に君がそこにいるのかと思ったよ。
でも、違った。
それは啓太なんかじゃない。
紛れもなく、これから僕が恋に落ちる相手。
タカ…。
―――…君だったんだ。