君のもの。Ⅱ
琴夜の涙…。
今でも鮮明に覚えてるんだ。
『…けいた…行かないで…』
その声は、弱々しかった。
琴夜の涙は一筋の線を描いてシーツへと落ちていった。
琴夜、僕は、何度も見なかったことにしようと思ったんだよ。
でも、無理だった…。
琴夜、僕は琴夜の涙を初めて見た。
琴夜、ねぇ…琴夜。
僕は悲しいよ…。
僕の知らなかった過去。
僕の知らない琴夜。
ねぇ、琴夜…。
琴夜は僕と出逢う前…。
どんな恋をしていましたか…?