蜜月 -love is blind-【BL】
「神宮くーん?」


 俺の声だけが、室内に虚しく響く。

 古い部室の扉には窓が無く、扉と反対側の壁に小さな窓が有るだけだ。

 いい加減この暗さに目が慣れてきて、磨りガラスから射す光りが眩しく感じられる。


「…………」

「ん……?」


 今、微かに喋った?


「……、……ぃ……」

「神宮?」


 もう一度、何気なくその肩に触れると、小刻みに震えているのが分かった。


「おい……」


 何だか、嫌な感じがする。

 胸の奥が、痛い。


「神宮!!」


 力任せにその体を揺すって無理矢理顔を上げさせると、涙が、流れていた。
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