蜜月 -love is blind-【BL】
「神宮ッ!!」


 俺は何度、神宮の名前を呼んだだろう。

 室内の埃にむせながら、何度も何度も呼んで、細い肩を揺らす。

 それでも神宮の目には、俺が映っていなくて。

 神宮のことが心配で心配で堪らない。

 気丈な神宮がこんな風になるなんて、きっと何か、訳が有るんだ。


 何したか知らねぇけど――アイツ、絶対に許さねぇ。


 神宮をこんな目に遭わせやがって。


「神宮、もう大丈夫だから!」


 苦しそうな呼吸を繰り返す神宮の目からは、止め処なく涙が零れ落ちている。

 何もかもが、小さくて、弱々しく見えてくる。

 普段の神宮からは想像できないくらい、脆くて、壊れ易い存在に見えてくる。

 俺は、そんな神宮を護ってやりたいと思った。

 今は俺しか、神宮を助けられないんだ!


 だから今は、一刻も早くここから出ないと……!
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