蜜月 -love is blind-【BL】
「陸上やってんのは俺で、怪我したのも俺だ。陸上は好きでやってたんじゃないし、そもそも咲都は関係ねーだろ!」

「な……に、それ……」


 ふるふると手を震わせながら、咲都が俺から少し離れていく。

 ほんの少し空いた距離が、俺と咲都の間に出来た溝に感じられた。


「やらされてたって、言うのかよ……嘘、でしょ? 僕は、頑張ってる彰那を見てるのが好きだった。高跳びやってる彰那が輝いて見えてたんだ!」

「……っ」


 ――咲都が、そんな風に思ってたなんて、知らなかった。


 俺はずっと、自分の目標じゃなく、他人の用意した目標に向かって、跳んでいただけだったから。

 言われるがままだったから。


「……お前の為に、跳び続けろってか。冗談じゃねぇ!」


 でも俺は……もう、跳べないんだ。


「そうじゃないよ! 彰那には才能があるのに、それを無駄にするなんて……」


 何でお前が泣くんだよ。

 泣きてぇのはこっちだよ。
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