蜜月 -love is blind-【BL】
 近付いてきた一人、陸上部のヤツが俺の胸倉を掴む。

 間近で睨み合った途端、ヤツの拳が飛んできた。

 瞬間的に歯を食いしばったとはいえ、口の中が切れて鉄の味が広がる。

 直ぐに相手の胸倉を掴んで、俺も反撃の1発をくれてやった。

 よろめくソイツの横腹に、右を軸にした蹴りを送り込む。

 無意識に体重を右に掛けてしまったが、膝の痛みはこれっぽっちもない。

 怒られた苛々と絡まれた苛々をそいつらにぶつけるように、俺は向かってくる2人と取っ組み合いになった。

 だが、さっきのヤツも加勢して2人に押さえ込まれた俺は、あっという間に形勢逆転、一気にピンチに陥る。


「最初からおとなしくしてりゃいいんだ……よ!」

「――っぐ、あ……」


 溜めて繰り出された拳が、俺の腹にヒットする。

 両側から抑え付けられているせいで、ガードも何も出来たもんじゃない。

 むせながら、俺を殴ったヤツを睨み付けると、「その目が生意気だ」とか何だとかほざきながら、腹を蹴ってきた。


 傷は見えないところに、ってことかよ!?

 とんだ腰抜けヤローだな!

 そもそも正々堂々文句言ったり、一人で喧嘩吹っ掛けられないからこうやって徒党を組むんだ。

 つまり、ろくに喧嘩したことすらない最低なヤツらってことだ。
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