彼に強引にされる
4、5年前に新校舎が設立されて、以来当然この部屋の機能自体もすべて新校舎にお引っ越しになって、本来ならば完全なる空き部屋になるはずなのにも関わらず。
いつだか触れたように、ちょっと変わったこのひとは、"こちらのほうが落ち着きますから"と自ら進んでここに居座ることにしたらしい。
――ほんと、変わってる。
特別教室しかない、人気のない閑散としたこの旧校舎に、わざわざ残りたがるなんて。
問い詰めてみても先生は「企業秘密です」と笑みを深くするだけ。
…誤魔化す、だけ。
でも、これはあくまでも私の推測に過ぎないのだけれど、同室の先生が他にもいたんじゃ、若い先生は肩の力もうまく抜けないのかも知れない。
人間、誰だって人目に触れない場所に、ひとりきりになりたいもんだ。