飛べない鳥
『ありがと…』


唯の手が俺の手を握った。

どくんと弾む胸、
手から伝わる唯の温もり。

だんだんと緊張してきた。


俺もぎゅっと唯の手を握り返す。



唯の手は細くて小さくて、すごく愛しい…



離したくないと思った。


ずっと繋がっていたいと思った。



唯の震えていた手が、
少しずつ震えが止まってきた。



『大丈夫か?』



『ん…ありがと…
遥斗は優しいね?』



『そんな事ねぇよ…あっ響だ…』



前方から響が二人分の食事を持って歩いてくる。



『遥斗、ごめんね?私友達待ってるからそろそろ行くね?ありがと』



唯は俺の手を離し、
この場所から去って行った。



唯の温もりがまだ指先から感じられる。


俺は唯が見えなくなるまでずっと見ていた。



『遥斗~お待たせ…』



息が荒くなった響は俺が注文したカレーを俺に渡し、隣に座って休んでいた。
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