飛べない鳥
─沢村 響《さわむらひびき》

俺と同じ歳で、俺と一緒の施設で育った。

響の親は響を置いて、どこかに消えたらしい。

残された響は、施設に預けられたそうだ。


だが響は小学生の頃、
俺のマンションの近くに住む、沢村という夫婦の所に養子として貰われた。


響は今幸せだと言っていた。


辛いはずなのに、幸せと言える響が、かっこよかった。


俺は言えないだろう。


だって俺の心は冷たい氷のようだから。


『なぁ遥斗?』


『あ?』


俺は制服に着替ながら、響を見る。



『今日かわいい子いるかな?』


カッターシャツのボタンを閉めながら、俺は響のどうでもいい話を聞いていた。

『聞いてんの?遥斗』


響が俺の方を見る。

俺は第二ボタンまで留めると、
次はネクタイを締めた。


『…興味ねぇよ?それに、前に付き合ってた…誰だっけ?あや?あき?忘れたけど、そいつは?』


『あ~別れたし、とっくに』
< 13 / 354 >

この作品をシェア

pagetop