飛べない鳥
『そいつで何人目だよ』


俺はスエットの下を脱ぎ、ズボンに足を通す。

ズボンを腰ではき、
ベルトをしたら準備完了だ。


『さぁな?まぁまたすぐ出来るでしょ』


響は笑いながら、テレビの電源を消した。


響は確かにモテる。

響を見た女は全員響に恋をするだろう。


響は調子にのって何人の女と付き合ったり別れたりする。


でも響は、寂しいんだろう。


俺はそう思っている。

だからあまり響には口を出さない。


『よし、行くか?そろそろ出ねぇとヤバイからな』


『おう…』


俺はカーテンを閉め、
飲みかけのレモンティーのグラスを流しに置き、部屋を出ていった。


鍵を閉め、真新しいローファーを履き、カバンを持ち、響と一緒に憂鬱な入学式へと向かった。
< 14 / 354 >

この作品をシェア

pagetop